今を大切にちょっと試してみる。『銭湯図鑑』大武千明さんの生き方が超絶参考になる

こんにちは、セントーライターのヒヅメです。皆さんは「らくがきひつじ」こと「大武千明」さんをご存知でしょうか?
京都の銭湯を横一文字にぶった切って上からのぞいて紹介する「ひつじの京都銭湯図鑑」という本の作者さんです。

大武千明さんは、愛知県で住宅メーカーの社員として勤務していたのに単身京都へ移住し毎日のように銭湯へ通い上記の本を製作。一見クリエイターらしい破天荒な経歴に見えますが、話を聞いてみると兼業クリエイター必見のサクセスストーリーを聞くことが出来ましたのでご紹介します!
<聞き手:セントーライター・ヒヅメ>

ひつじとブタのツーショット
ヒヅメ:
ということで、らくがきひつじこと大武千明さんの経歴を徹底的に聞いていこうと思います。……ってあれ?今日はひつじの顔で行くんですか?
ひつじ:
全然顔出しOKなんですけど、インタビュアーがブタさんだって聞いたので今日は私もこれで行こうかと思って(笑)
ヒヅメ:
(ひつじさんをもっと知ってもらうインタビューなんだけど、こんな感じでいいのかな?)
「たまたま」銭湯と出会い、「テキトー」に京都へ移住

何かよく分からないけどインタビュー開始
ヒヅメ:
ひつじさんは愛知県の豊橋出身なのにレトロな銭湯が好きすぎて京都へ移住してしまうぶっ飛んだ人という印象があって
ひつじ:
あはは!そんなこと全然ないですよ
ヒヅメ:
そこで、銭湯との出会いや京都へ移住するきっかけを知りたいなと
ひつじ:
うーん、銭湯というかレトロなものが好きだったんですよね。 いろいろレトロなものを見ているうちに気付いたら銭湯も好きになっていたって感じです
ヒヅメ:
豊橋はレトロなものが多いのですか?
ひつじ:
レトロなもの多いんですよー!ただ銭湯はあまり近くにありませんでした。でも住込みをしていた京都のゲストハウスの近くにたまたま銭湯が多かったんです。そこのシャワーがお客さんと共同だったのもあってそれなら銭湯に行こうかなと

ヒヅメ:
あれ? 銭湯が好きすぎて京都に移住したんじゃないんですか?
ひつじ:
勤務先が新築住宅メーカーだったのですが、古い建物を扱ってみたいなと。でもなかなか仕事が探せなくて。そんな中趣味の旅行をきっかけにたまたま京都の町家を使ったゲストハウスで住込みの募集を知ったんですよ
ヒヅメ:
それで決めちゃったんですか!?周りからは急な退職や移住に驚かれませんでした?
ひつじ:
まあそうですね。確かにいきなり決めたんですけど「いつでも地元に戻ってくればいいや」って。別に一念発起したとかじゃなくて、テキトーに「ちょっとやってみようかな」って
ヒヅメ:
さっきから「たまたま」とか「テキトー」が多いですね(笑)
ひつじ:
ごめんなさい、テキトーなんです(笑)
きっかけは「たまたま」でも好きなものはとことんハマる

ヒヅメ:
出版まではどういう流れだったんですか?
ひつじ:
銭湯に通ってイラストを描いていたら、Facebookで「これ本にしたら面白い」って友達に言われて。「それじゃあまあ作ってみようか」みたいな感じでイラストをまとめて小冊子を作ったんですよ
ヒヅメ:
合わせて小冊子を2冊作ったのでしたね。そこから『銭湯図鑑』までの流れは?
ひつじ:
2冊目の発売イベントの時にたまたま出版関係の人が声かけてくれて(笑)

再度の「たまたま」登場に笑う僕 ご都合主義映画か
ヒヅメ:
イベントはどちらで開催したんですか?
ひつじ:
本の中にも出てくる「さらさ西陣」という銭湯の建物を使ったカフェで原画展をした時ですね
ヒヅメ:
へえー!それも何かのご縁で?
ひつじ:
いや、私がそのカフェにめっちゃ行ってたんですよ!退職金をほとんど使い果たすくらい通いましたね!

やっぱりちょいちょいぶっ飛んでるのかな?
ひつじ:
さすがに店長さんも覚えててくれて。ダメ元でお願いしてみたら、あっさり使わせてもらえました
ヒヅメ:
退職金の話はびっくりですけど良い話。製作期間はどれくらいでした?
ひつじ:
半年くらいですね。でも最初全然進まなくて、最後の1か月くらいでドドドって
ヒヅメ:
あー、夏休みの宿題みたいな
ひつじ:
そー!この頃はゲストハウス辞めてオフィス勤めだったんですけど、締め切りがヤバすぎて有給を使い果たす勢いでした(笑)

「退職金の次は有給を使い果たしちゃいました」と笑うひつじさん
ヒヅメ:
それは職場からも心配されるでしょ!ちなみにどんなお仕事をしてたんですか?
ひつじ:
京都市役所で非常勤のお仕事でした。週4日勤務ですし、副業もOKだったのでかなり専念できましたね
ヒヅメ:
クリエイターなのに足元がっちりですやん!僕も転職したい
ひつじ:
京都市役所かなりおすすめですよ(笑)ハローワークから応募しました
ヒヅメ:
メモしとかなきゃ……って話がズレちゃった
身の回りでバズって少しずつフリーランスへ移行

話が楽しいのでマジトークしちゃった
ヒヅメ:
出版後の周りの反応はどうでした?
ひつじ:
世間的には小さかったと思うんですけど私的にはバズってて、ツイッターの通知が止まらないってのを初めて体験しました!……それでもまだ初版が残ってるんですけど(汗)
ヒヅメ:
えー!そうなんですか
ひつじ:
あ、でも最近は塩谷さん※に便乗して一緒に売ってもらえる機会もあって、ありがたい話です!
※塩谷歩波さん。銭湯を立体的に切り取って紹介する「銭湯図解」という本の作者。情熱大陸にも出演した人気急上昇中のクリエイターさん。
ヒヅメ:
意外。「あとから出て来た東京の女がー!」って怒り狂ってるかと思ってました
ひつじ:
いやいや!むしろ実際にお会いしてすっかり意気投合しちゃいました。塩谷さんの本と一緒に読んでもらうと、銭湯をより楽しめると思うし、むしろ便乗させてもらって本当にありがとうございますって感じです(笑)

便乗でも本が売れたみたいでよかったです
ヒヅメ:
現在は「手描き図面工房マドリズ」として独立されましたね
ひつじ:
市役所の契約更新できるかどうか分からなかったんですよ。そんな中、名刺代わりに本を出していたらお仕事をもらう機会も増えてて。「もしかしたらフリーランスで行けるんじゃないかなー」って
ヒヅメ:
その温度感いいなあ
そんなひつじさんが次に狙うこと

ようやくインタビューっぽい場所に移動
ヒヅメ:
今後挑戦したいことがあれば、銭湯関係以外でも良いので教えていただけますか?
ひつじ:
大きくは2つあって。1つは自分の銭湯を持ちたいということですね。もう1つは不動産的なことをしたくって。不動産屋さんを京都でしたいんです。自分で間取り図を描いて
ひつじ:
町家みたいな古民家を残していくために自分が何を出来るかって考えた時に、設計よりも前に出来ることがあるんじゃないかと思いまして
ヒヅメ:
不動産と人が出会う瞬間ですね
ひつじ:
そうです。その建物がどうなっていくのかは、その建物が誰と出会うかだと思うんです。ただ今更私が京都で古民家や町家紹介してもなと思ってて。今風呂無しの長屋に住んでるんですけど、その暮らしが結構面白いんですよ。風呂無し物件紹介なら京都にもそんなに無いかなと
ヒヅメ:
なるほど。東京なら確か『東京銭湯』がそれをやってましたね
ひつじ:
そう!私もその時アイディアを温めていたので「やられたー!」って思いました(笑)

「やられたー!」
ヒヅメ:
笑う。ひつじさんって、京都の銭湯というか、「まちづくり」そのものに興味があるんじゃないですか?銭湯図鑑もただ銭湯を切り取ったものではなくて、なんというか銭湯の日々の生態まで記載したような
ひつじ:
そうなんですよ!大学で学んでいたこともそうですけど、市役所での業務もある種の「まちづくり」で
ヒヅメ:
どんなことをしていたんですか?
ひつじ:
密集市街地対策というものです。京都の町並みの魅力をキープしつつ火事や地震等に対する危険性を減らしていくんです。その時に地域の人と話す機会が多かったんですよ
ヒヅメ:
そう考えると、銭湯、大学、設計事務所、ゲストハウス、市役所と全部がつながってきますね
ひつじ:
結局興味のあることしかやっていないというか(笑)振り返ると、ほんとたまたまつながってたなと

好奇心に素直に生きるとこんなに上手くいくものなのか
ヒヅメ:
そして今は銭湯の経営と、銭湯と人とをつなげることをしていきたいと
ひつじ:
そうですね。銭湯のある暮らしを提供したいというか。自分が銭湯を経営した時にお客さんが来ないとしょうがないので。 銭湯に行くのいいよねって思う人も増やしていかないと。 その両方をやっていきたいんですよ。
ヒヅメ:
何かと「テキトー」「たまたま」って言ってきた人とは思えないくらいの強い思いですね
ひつじ:
そうなんですよ!今まであんまり「やるぞ!」ってことをしてこなかったから、あんまり上手く振舞えてないんですけど
ヒヅメ:
ひつじさんだったら今までのような温度感でしっかりやっていきそう。ひつじさんは現状のベースを大切にしながら自分の好きな歩幅で進んでいけるのが強みなんだなと感じました
ひつじ:
あ、きれいな形でまとめてくれましてありがとうございます(笑)
ヒヅメ:
わーめっちゃ恥ずかしい! 言わなきゃよかった!
ひつじ:
あはは!

インタビューありがとうございました
1時間ほどのインタビューでしたが、常に明るくてそれでいて丁寧に説明してくれて、人や町へのリスペクト溢れる姿が魅力的なひつじさんでした。
インタビュー中、ひつじさんは「テキトー」と言っていましたが、それは今ある基盤を大切にしながらちょっとだけ試していったひつじさんの挑戦を彼女なりの表現で言い表したものだと感じました。
サラリーマンをしながらクリエイター活動している僕や皆さんにとって超絶参考になるモデルケースだったと思います!取材楽しかったなあ。
<取材・文=ヒヅメ>
インタビューにも出てくる「ひつじの京都銭湯図鑑」もゆるーく販売中!
ひつじさんからは一切お金をもらってませんが、マジで良い本でしたのでこちらでも紹介します!
銭湯を上からのぞいた間取図はもちろん、イベントに参加した赤ちゃんの目線で描いてみたイラストや最寄駅から銭湯に行くまでに出会える街並みなど、ひつじさんのゆったりとした世界観満載です!
この記事を書いたセントーライター


ヒヅメ
漫画を描くことと銭湯が趣味のサラリーマン。
風呂あがりはオロナミンCが好き。