北斎と銭湯

銭湯に描かれる富士山の絶景

両国湯屋「江戸遊」4F女性浴室

両国湯屋「江戸遊」4F女性浴室

高い天井を見上げ、広い湯船で足を伸ばして少し熱めのお湯に浸かる。今日1日の疲れを癒し、リフレッシュできるのが、銭湯の醍醐味。そんな銭湯の爽快感に一翼を担っているのが、富士山を始め壮大な景色が描かれているペンキ絵(背景画)ではないでしょうか。

日本で最初に銭湯のペンキ絵が描かれたのは、神田猿楽町にあった、明治17年(1884年)創業の「キカイ湯」のご主人が、大正元年(1912年)に、画家の川越広四郎に依頼したのが始まりといいます。
その後、ペンキ絵は関東一円の銭湯に広がり、その中でも雄大な富士山の絵が人気となり、太宰治が1939年発表の「富獄百景」で、山梨県の御坂峠から見た富士山について、「これは、まるで、風呂屋のペンキ絵だ」と言わせたほどでした。

江戸時代の銭湯

銭湯に描かれる富士山のペンキ絵は、絵師によるイメージや銭湯のご主人による依頼もありますが、浮世絵師「葛飾北斎」の代表作でもある「冨嶽三十六景」に描かれている富士山をモチーフとして描かれている背景画も多く見られます。

葛飾北斎は、江戸時代後期(1760年ー1849年)の浮世絵師として、生涯を通して約3万点の作品を残しています。

銭湯のルーツは、平安時代まで遡りますが、日常的に庶民が利用する公衆浴場として利用され始めてたのが江戸時代で、江戸の銭湯の発祥は、天正19年(1591年)に現在の東京都千代田区に、伊勢与市(いせ・よいち)という人物が建てた「せんとう風呂」が好評となり、急激に広まったと言われます。
葛飾北斎の「北斎漫画」にも江戸時代の銭湯(湯屋)の様子が描かれています。

葛飾北斎『北斎漫画 十二編』すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎『北斎漫画 十二編』すみだ北斎美術館蔵

現在の多くの銭湯は、明治以降の創業が主になりますが、江戸川区にある「あけぼの湯」は安永2年(1773年)の創業、中央区銀座の「金春(こんぱる)湯」は文久3年(1863年)の創業で、共に江戸時代から続く銭湯です。

金春湯

金春湯

北斎生誕の地「墨田区の銭湯」

葛飾北斎が生誕し、その生涯のほとんどを過ごした北斎ゆかりの地「墨田区」で「冨嶽三十六景」の背景画を楽しめる銭湯を訪れてみました。

御谷湯

御谷湯

5F浴室

1947年創業の御谷湯は、2015年にリニューアルオープン。公衆浴場としては珍しい5階建てで、1階には、障害者用家族風呂が設けられていています。和モダンにより寛ぎを演出した館内は、バリアフリーが充実している「福祉型銭湯」としても多くの人に愛されている銭湯です。

5階の浴室には、ペンキ絵師の丸山清人さんによる、葛飾北斎「冨嶽三十六景」の一景が描かれています。半露天風呂では、黒湯の天然温泉に浸かりながら、東京スカイツリーを眺望することができます。

両国湯屋「江戸遊」

両国湯屋「江戸遊」

2F男性浴室

2019年6月に全館リニューアルオープンした江戸遊でも葛飾北斎の浮世絵を楽しむことができます。男湯は「冨嶽三十六景 神奈川波浪裏」、女湯では「冨嶽三十六景 凱風快晴」が描かれ、壮大な富士山を眺めながらゆったりとお湯に浸かり、1日の疲れを癒すことができます。

ペンキ絵で親しみのある冨嶽三十六景でおなじみ「葛飾北斎」の浮世絵を楽しもう

銭湯で親しみのある「葛飾北斎の浮世絵」を楽しむことができるのが北斎生誕の地、墨田区亀沢にある「すみだ北斎美術館」です。

すみだ北斎美術館外観 撮影:尾鷲陽介

すみだ北斎美術館外観 撮影:尾鷲陽介

館内は、7つのエリアで構成された常設展示室と企画展示室があります。常設展示では、各時期の代表作が当時のエピソードと共に順番で紹介されていて、北斎の作品と共にその生涯を理解することができます。銭湯に向かう前に葛飾北斎の浮世絵に触れてみてはいかがでしょう。

冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏
冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏

葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」すみだ北斎美術館蔵

【企画展のご案内】

すみだ北斎美術館企画展 
「大江戸歳事記」北斎と楽しむ四季のイベント

※企画展チラシ 会期6月30日~8月30日へ変更して開催

「大江戸歳事記」北斎と楽しむ四季のイベント

現代の私たちは、毎年決まった時期に行われる様々なイベントを通して、1年の生活のリズムを感じとっていますが、北斎が生きた江戸時代の人々も同様に年を重ねていました。本展では、そのような年中行事に焦点を当て、北斎や門人たちが描いた当時の風俗を紹介します。150年以上前の江戸の1年を身近に感じ、先人の生活に思いをはせながら、江戸の歳事記をお楽しみください。

葛飾北斎「朱描鍾馗図」すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎「朱描鍾馗図」すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎「菊慈童」すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎「菊慈童」すみだ北斎美術館蔵

会期:2020年6月30日(火)〜8月30日()※前後期で一部展示替えあり
《前期》6月30日(火)〜8月2日(
《後期》8月4日(火)〜8月30日(
開館時間:9:30〜17:30(入館は17:00まで)
休館日:毎週月曜日 ※開館:8月10日(月・祝)、休館:8月11日(火)
観覧料:一般1,000円 高校生・大学生700円 65歳上700円 中学生300円 障がい者300円
主催:すみだ北斎美術館
詳細は、ホームページをご覧ください。(下段掲載)

【DATE】

– 金春湯 –
東京都中央区銀座8-7-5
金春湯HP

– 御谷湯 –
東京都墨田区石原3-30-8
御谷湯HP

– 両国湯屋「江戸遊」 –
東京都墨田区亀沢1-5-8
両国湯屋「江戸遊」

– すみだ北斎美術館 –
東京都墨田区亀沢2-7-2
すみだ北斎美術館

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