連載

蒲田温泉と桶一杯の水

今回は蒲田温泉に訪問したいと思います。
かの有名な天然黒湯を有する銭湯です。

京急蒲田から歩いて10分程度、驚くほど床屋ばかりの通りを抜けると蒲田温泉は姿を現します。
大きな看板とライオンが特徴の看板からは、派手でありながら程よいノスタルジーの香りが。

蒲田温泉のアイコンとなる看板。温泉街の始まりを感じます。
蒲田温泉のアイコンとなる看板。温泉街の始まりを感じます

蒲田温泉に潜入

早速入ると、受付の前にはガラスのショーケース。
中には数々の物販商品が所狭しと並べられており、物販中毒の僕は、ジロジロとショーケースを覗き込み物色します。
こういう、カルチャーや作った人の思いみたいなものを身に付けることができるものに魅力を感じるのです。

すると、壁にチラシが1枚貼ってあり「Tシャツデザイン募集!」の文字が光っていました。
実は、これも蒲田温泉へやってきた理由の1つなのです。
ここ蒲田温泉では、この文章を書いている現在、オリジナルTシャツのデザインを公募をしています。
しかも、選ばれた人には報酬が。

僕は、まだまだスキルが覚束ないのですがデザインをしており、この情報を知って参加を数秒で決意しました。
その為には、蒲田温泉体感せねば、とやってきたのです。
きっと、公募なんてものは銭湯側の手間暇から考えれば面倒くさいものです。
それなのに、しっかりと報酬まで用意して募集をかけるという行為に新たな裾野を広げようとする銭湯側の熱い意志を感じました。

Tシャツデザイン募集!

浴場の中へ

さて、いざ入場です。

入り口近くには洗い場があり、右側を見れば無料のサウナがあります。
しかしどう見ても目につくのは正面の最奥、真っ黒にそびえる浴槽。
これこそ蒲田温泉のシンボル、もう浴槽からして相当な黒さです。

実際に浸かってみると…本当に3cmほど浸かれば何も見えなくなってしまいます。
特に肩まで浸かってる常連のおじさんなんて、身体が何も見えないので、一見すると生首が浮いているように見えるのです。

そんなインパクトのあるお湯ですが、実際に浸かってみるととてもまろやかな感じです。
刺激的なのでは?!と覚悟をしてきましたが、本当に綺麗な漆黒のお湯でした。

そもそも、黒湯とは海洋性の温泉で、この色は古代の植物や海藻から来ています。
これほどだと、肉眼でもその成分が見えるんじゃないか?と思いながらやってきたのですが、全く見えません。
何億年という時間をかけて、非常に細かくなっているのです。
外国人の考古学者とかは、大興奮しながら黒湯に入るんじゃないでしょうか。

サウナ、そして水風呂へ…

しっかりと黒湯に浸かってから、サウナに入ります。
最近になって新しく作られたようで、2段式の木の匂いの漂うサウナです。程よく汗をかいたところで、水風呂へ向かいます。

早速汗を流して入ろうとすると、水風呂前の桶に水が入っていました。
誰かが使い忘れたのかなと思いながら、一旦流して僕も水を浴びます。

そして水風呂にイン。
全身を冷感が突き抜ける極上の気持ちよさ。
というのも、水風呂の真上にある窓が開いており、外気が冷たいため下に降りてきて一帯が冷やされているのです。
まるで自分以外の時間が止まっているような感覚になります。

水風呂から立ち上がると現世に帰ってきたようです。
休憩に、黒湯とは別の超音波バイブラを有している浴槽へ向かいました。こちらには白湯が流し込まれています。

蒲田温泉の浴槽紹介

蒲田温泉の浴槽は大きく分けると2つで、それぞれ真ん中で仕切られているため、正確には4つとなります。

黒湯の浴槽は高温と低温に分けられており、低温は42~43度くらいで、高温は45度くらい。
あとは白湯浴槽、手前に僕が入ろうとしている超音波バイブラの浴槽があり、区切られた奥には電気風呂が仕込まれています。僕は入っていませんが、おじさんがビクンビクンなっていたので、結構電気は強めなのかも知れません。

超音波風呂には、浴槽の下が赤いライトで照らされています。
これがバイブラの泡で淡い感じになっていて、マジで真っ赤っかのゆでダコおじさんが潜っているのかと思い入れませんでした。
どういうことだとよく見た結果、ライトだと判明したのです。
黒湯の生首、超音波のゆでダコおじさん、視力の悪い僕の目が生み出した、蒲田の悲しき幻覚たち。

桶一杯の水

そんなこんなで気持ちがノってきた僕は黒湯・水風呂・サウナを駆け巡りました。
しかし、1つの違和感に気づきます。
先ほどの桶、何度使っても次に見たときには水が汲んで置いてあるのです。

「また誰か使ってるのかな?」と思っていましたが、それが別の意味を持つように思えてきました。

ここにやってきてからずっと思っていたのですが、蒲田温泉には一体感があるのです。
銭湯はコミュニティの場でもありますが、1人で幸福になっていく場所でもあります。
でも、ここには「みんなで幸せになろう!」という空気が色濃く存在しており、さっきも明らかにただのお客のおじさんが脱衣所の拭き掃除をしていました。

そんなことを考えながら、あの桶を見ます。
きっと、次の人のために誰かが入れてあげているんだと思うんです。

実際にそうかなんて誰にもわかりません。
でも、その後僕も桶に水を汲んでおいたのですが、次に入るおじさんはなんの迷いもなくその桶の水を使っていました。
言ってしまえば赤の他人が入れた水、なのに気持ちのいい被りっぷり。
「俺らは銭湯に幸せになりに来てんだろ?じゃ、仲間だ。信用するぜ。」
そんな言葉を背中から感じました。

ユニティ・蒲田温泉。
お客さんの優しさに浸りながら、最後に黒湯の浴槽へ。
常連さんが蛇口を回すと、また新たな黒湯が注ぎ込まれました。
その時点で尋常じゃない濃厚さ……改めて、このお湯の底知れなさを感じました。

浴槽に浸かりながら、黒湯が辿ってきた太古の時代について思いを馳せる。
普段は絶対やらないであろう、そんな行為をしていると、ふとした拍子に普段思いつきもしない色々なアイデアが浮かんでくるのです。

気づけば、蒲田温泉用のデザインを4つくらい思いついた僕は、また蒲田温泉へと向かう予定を立てることにしました。
次回は、魅惑の物販スペースに自分が考えたTシャツが並んでいることを祈って。

蒲田温泉

この記事を書いたセントーライター
YouSay

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大阪育ちの東京住まい。
書くことと描くことが好きで、ライターとして参加致しました。
時折バンドやチャリティーブランドのデザインをしておりますが、銭湯業界参入が密かな野望です…。

コメント

  1.  お名前 : うっきーさん  

    蒲田懐かしいー
    昔住んでました。
    写真いいですね。

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